金融業界がおさえておきたい 「デザイン戦略のヒント」
昨今の金融業界は、テクノロジーの進化と消費者の行動変化により大きな変革の最中にあります。
その中で、デザインは単なる見た目や形状を整える要素ではなく、ビジネス戦略の一部として重要な役割を果たしています。
この記事では、金融業界がこれからのデザイン戦略を考える上でおさえておきたいポイントを4つの観点から解説します。デザインを戦略的に実践したい、考えていきたい方のヒントになれば幸いです。
目次[非表示]
- 1.分析的リーダーシップ
- 2.シームレスなユーザー体験
- 3.部門横断的な協業
- 4.継続的な反復改善
分析的リーダーシップ
デザインにおいて重要なことは、直感やセンスだけでなくデータに基づいた分析的なアプローチを基軸とすることです。とりわけ金融業界では様々な顧客層の利用データや行動データを分析する必要があるため、それらをいかに上手く取り扱えるかがデザイン活動の成果を左右すると考えられます。分析的リーダーシップが機能すれば、定量的な仮説を立てることができ、デザインの成果も客観的に評価することができます。
シームレスなユーザー体験
デザインが担う領域は、単なる製品設計や表層のインターフェースにとどまりません。顧客にシームレスで気持ちのよい体験を提供することもデザインに求められる重要な役割です。とくに金融業界においては、物理的な店舗からデジタルなアプリまで、顧客は様々なタッチポイントでサービスを利用します。その接する全てのポイントで一貫した体験を提供することが非常に重要ですが、それを実現するときこそデザインのアプローチが必要です。顧客の目線に立ち、カスタマーファーストで各タッチポイントの体験を最適化すること、また各タッチポイントの間を繋げるために必要な部署連携やサービス連携を丁寧に行っていくこと。そういったデザイン活動が顧客の満足度を高め、ロイヤルティを確保することにつながります。
部門横断的な協業
先述のとおり、デザインを戦略的に実践する場合、部署やチーム単位ではなく組織全体で取り組むことが必要不可欠です。金融業界にとくに多い課題は、部署単位でそれぞれのサービスを管轄したり、機能が縦割りになっており各所の連携がスムーズにいかないなどがあります。そこで、デザイン戦略を経営戦略として位置付け、部門や部署を横断する形でプロジェクトを進めていくことが求められます。例えば、マーケティング部門だけでなく、IT部門や営業部門、経営企画室など、異なる専門分野の人材が協力してデザインに取り組むことや、デザインシステムの活用などチームを横断してデザイン活動ができるような仕組みづくりが必要です。組織全体で一貫したデザイン戦略を推進することは一朝一夕にできるものではありませんが、顧客に対する価値提供を最大化するために必ず必要な取り組みです。
継続的な反復改善
多くの企業や組織でおざなりになりがちなことですが、デザインは一度きりのものではなく、継続的な反復改善が必要です。金融業界においてもデザインの成果を定期的に評価し、新たな顧客のニーズや市場の動向に応じて改善を続けることが非常に重要です。とくに金融業界の場合、顧客層が幅広いこと、提供するサービスが複雑で煩雑なケースが多いことを踏まえると、顧客からのフィードバックを丁寧に吸い上げ、デザインによって改善し、また評価をする。人的リソースやコストがかかることですが、時代の流れや顧客の要望に応じてデザインを繰り返し改善していかなれば、当然、顧客体験は向上されません。継続的なデザインの反復改善は、デザインがビジネスの成長を支える持続的なエンジンとなります。
デザインはビジネスの成果を直接左右する力を持ちます。デザインの価値を理解し、それを戦略的に活用することで、金融業界においても顧客の期待を超える価値を提供し、競争優位性を確保することができます。そのために、デザインを単なるサービス開発の一環ではなく、ビジネスの成長を支えるエンジンとして位置付け、「デザイン戦略」として組織的に取り組むことが重要です。