富士通株式会社では2017年から、顧客のフロント業務をDX化するためのソリューション「CHORDSHIP(コードシップ)」を展開しています。同社では近年、金融機関に特化したサービスの導入支援を進めており、導入先の業務改善に貢献しています。
アジケは2022年以降、複数の金融機関に対する「CHORDSHIP」導入プロジェクトに参画し、主にアプリケーションのUI/UXデザインをご支援しています。
今回は本プロジェクトを担当している、富士通の山田悠太さんと、中村和宏さんにお話をうかがいました。
銀行の店頭業務DX化を推進するソリューションを提供
— はじめに、お二人の所属する事業部が担っている役割をそれぞれ教えてください。
山田さん
私が所属しているBanking&Securities事業本部では、DXパートナーとして金融機関のお客様とともに、最先端技術とあらゆる業務ノウハウの融合により持続可能な未来を支える金融サービスを提供し続けることをミッションとしています。
私はその中でも地方銀行を中心に、地域社会の課題解決も見据えたサービスの開発・提供を行っています。具体的には、最新技術と当社ソリューションを活用した銀行既存システムのモダナイゼーションや業務のデジタル化に取り組んでいます。
その取り組みの一つが、当社のソリューションである「CHORDSHIP」を活用した、店頭の窓口業務を非対面化するというものになります。
中村さん
私はConsumer Experience事業本部に所属しており、当社が開発したさまざまなソリューションをお客様に導入していく役割を担っています。
金融機関を対象としたサービスの構築に本格的に取り組みはじめたのは、2021年頃からです。金融関連のフロント業務に必要なシステムは、他業種と比較すると高度かつ複雑なものです。そのため専門特化したサービスモデルを設計し、導入を進めています。
— 金融業界全体としても、DXに関する取り組みを強化する流れがあるのでしょうか。
中村さん
そうですね。社会全体の共通課題でもありますが、特に地方銀行では今、業務にあたる人員の確保が難しくなっているといいます。さらにコロナ禍の影響も大きかったでしょう。多くの金融機関がこれを喫緊の経営課題として捉え、積極的に業務のデジタル化、オンライン化に取り組んでいます。
社会インフラに近いサービスだからこそ、UI/UXの専門家が必要だった
— CHORDSHIP導入プロジェクトを進めるにあたり、UI/UXデザイン専門の外部パートナーを必要とされた理由を聞かせてください。
中村さん
金融機関の中でも、特に銀行の場合は利用者層が非常に多岐にわたるという特色があります。老若男女、デジタルに詳しい人もそうでない人も、誰にとっても使いやすいサービスを提供し、全員を等しくサポートしなければなりません。
そうしたサービスを社会的なインフラに近いものとして設計するには、今まで以上にUI/UXデザインを最適化する必要があると考えていました。
山田さん
はじめにアジケさんとご一緒したのは、とある地方銀行様とのプロジェクトでしたね。
アジケさんは、金融サービス関連のデザインプロジェクトを多数手がけた実績をお持ちでしたので、私の担当していた銀行様がUI/UXデザインを強化したいと考えていて、アジケさんをデザインパートナーに選定されてご一緒したのが最初でした。
デザインパートナーとの協業で、開発プロセスが変化した
— アジケがパートナーとして加わったことで、デザイン開発の進め方に変化はありましたか?
中村さん
店頭業務を代替するアプリケーションを開発する際、これまでは当社内で端末画面の設計をした後、デザインを依頼するケースが多かったんです。でもアジケさんにサービスの企画段階から参加してもらって以来、ビジュアライズを早い段階で行い、お客様に提示できるようになったことが大きなメリットだと感じています。
従来のウォーターフォール型の開発プロセスでは、プロジェクトのフェーズがある程度進んでから、具体的なデザインを提案する流れがほとんどでしたから。
山田さん
企画段階からあらかじめデザイン面の検討を進めることができ、後の工程に進んだときの変更、手戻りなどを最小限に抑えられるようになりました。
特に金融サービスの場合、銀行業務特有の条件分岐などが多いため、システム開発が非常に複雑になりがちなんです。アジケさんにお願いし、サービスの構想段階である程度UI/UXデザインや画面フローを想定できるようになった分、私たちはシステム開発に注力できるようになったと思います。
またアジケさんはデザインを作るだけでなく、システムの開発・テスト工程までデザインの専門家として伴走いただき、開発ではシステムの制約などによりデザインの調整がどうしても必要になったときに相談に乗っていただいたり、テストではデザインの仕上がりについてフィードバックをしていただいたりしたおかげで、より良いモノができたと感じています。
卓越したUI/UXデザインは、お客様の誤操作を減らし、操作時間も短縮されるため、高品質なアプリケーション開発において欠かせない重要なキーファクタだと考えています。