Ver.3
金融プロダクトに携わるデザイナーに必要なスキル

記事の内容が続いています。ぜひ前の記事を先に読んでみてください。

Vol2. 銀行にとっての”いいプロダクト、いいデザイン”をつくるために必要なこと

 

金融プロダクトのデザインは「誰しもが使いやすいもの」にしなければならない。

そのためデザイナーはデザインスキルだけではない多方面での技術やノウハウが求められています。今回はデザイナーに求められているスキルはどんなものがあるのか、デザイナーの藤戸日果里さんにヒアリングしてみました。



デザイナーはプロダクトの本質的なゴールを見抜かなければいけない

ー銀行のプロダクトデザインをつくるためにデザイナーがやっていることはなんですか?

先日お話しさせていただいた通り、金融プロダクトのデザインは特殊なデザインルールや社内決裁に時間がかかるなどの事情があることが多く、形にするまで時間がかかってしまうことがあります。

例えば、新しいプロダクトを構築するとします。まずはどんなプロダクトなのか、ターゲットやサービスの目指す姿(ゴール)、システムの要件などの概要を確認します。他業界のプロダクトであれば、詳細を確認しながら制作段階へと進行することができますが、銀行のプロジェクトは少し特殊。プロジェクトが開始されると、デザイナーはすぐ、他業界とは異なる様々な課題に直面します。具体的には、

  1. 要件がまとめられている資料を読んでも銀行特有の用語が多く、確認・理解に時間がかかる
  2. 決済や個人情報などに関わるシステムが関与していると、一部の要件を共有いただけない場合がある
  3. 決裁の段取りが他業界に比べて複雑で時間がかかるため、進行がスムーズにいかない可能性がある

など。もちろん、すべての金融機関に当てはまる課題ではありませんが、デザイナーは上記のことを念頭において、プロジェクト開始前、開始と同時に他業界とは異なるTodoリストを作成します。

☑️プロダクトに関わる銀行用語を学習すること
☑️システムの要件を確認し、“わからない部分”を明確にしておくこと
☑️銀行内の決裁システムを理解すること
☑️決裁や要件の確認等を見込んだプロセス、スケジュールの作成



「聞き出す」「伝える」デザイナーに求められるのは、コミュニケーション力

ー他業界との違いはありますか?

他業界と比べて明確に異なるのは、よりたくさんのコミュニケーションが必要ということです。

デザイナーが持つ不明点を明確にしなかったり、間違った解釈のままプロジェクトを進行してしまうと、銀行側が想像していたものと全く違うデザインに仕上がってしまう危険性があります。銀行側はデザイナーが“何を理解していないかわからない”ことがあるので、デザイナーはわからないことを素直に伝えて、つくりたいプロダクトの解像度をあげていくことが大事なんですよね。

つまり、デザイナーのコミュニケーションスキルがすごく重要ということです。

デザイナーは銀行側から様々なことをヒアリングします。プロダクトの「要件やコンセプト」「ユーザーに提供したいもの」「業務フロー」などの具体的なことから、「本質的な課題」と「理想のゴール」などの抽象度の高いことも共に定義していきます。この「課題」と「ゴール(理想像)」をいかにデザイナー自身が理解しているかが肝だと思っています。

ー聞き出す力のほかに、大事なことはありますか?

「伝える」ことです。

仕上がったデザインに対してはデザイナー自身の言葉で説明してもらっていますが、どんな想いで作ったものなのかだけではなく、誰が聞いてもわかりやすい言葉になっているかなども気をつけて説 明するようにしています。また、他業界と少し違うところは、ご担当者様に説明するだけの資料だけではなく、決裁に必要な資料も作成する、ということですね。

多数の金融機関のプロジェクト実績があるからこそ、どのタイミングでどんな資料を提出すればスムーズに承認が得られるか、ある程度は把握できていると思います。なので、タイミングを見計らってデザイナーは社内決裁のための資料の準備をサポートします。タイミングだけではなく、どんな方々がその資料を確認するのかをキャッチするのも、コミュニケーションを通じてわかってくるものなので、高いコミュニケーションスキルと少し特殊なセンサーが必要になります。ご担当者様に「おかげさまでスムーズに決裁が通った」などとコメントいただくと、「やったー!」となります(笑)。

デザイナーは「デザインする人」ではない

ーアジケならではのコミュニケーションはありますか?

「率直に言う」ということですね。

言われたことを忠実に形にすることももちろん大事ですが、私たちは常に「お客様にとっていいもの、価値のあるもの」を提供したいと考えています。なので、プロジェクトを進めるにあたっても、「本当にこれでいいのだろうか?」「こうした方がいいんじゃないか?」と疑問を持つことがあれば、ご担当者様に率直に伝えるようにしています。「確かに!」と頷かれることもありますし「違うよ!」となることももちろんありますが、アジケの意見を恐れずに伝えるということが、アジケの特徴かなと思います。

こういったことが言えるように、社内でもデザイナーのトレーニングを行っています。聞き出すこと、伝えること、方向を正すこと、恐れずに率直に言うなどができるコミュニケーションスキルは、デザインスキルに直結していると思っています。

 

デザイナーの役割は「デザインをする」だけではありません。デザイナーの多方面での高いスキルがあってこそ、アジケも満足するプロダクトデザインを完成させることができるんです。

今後もアジケはスキルの高いデザイナーを輩出するために、たくさんのノウハウを蓄積していきたいと思います!

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