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なぜ、あなたのシステムは「使いにくい」のか?SaaS・業務システムのUXデザイン5つの基本原則

日々、多くのBtoB向けSaaSや社内システムに携わる中で、「なぜ、このシステムはこんなに使いにくいんだ?」と頭を抱えていませんか?

「レビュー評価が低いのはなぜだろう?」「競合の人気アプリはどこが違うのだろう?」と悩んでいる方もいるかもしれません。実は、この「使いにくさ」は、ユーザーの生産性を低下させるだけでなく、利用者の不満や心理的ストレスの原因にもなり、システムの継続的な利用を妨げる大きな課題となります。

この記事では、BtoBシステムが抱える特有の難しさを紐解き、ユーザー体験(UX)を改善するための5つの基本原則を、具体的な事例を交えながらわかりやすく解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.BtoBシステムが抱える「3つの特有の難しさ」
    1. 1.1.1. 機能が「多い・複雑」であること
    2. 1.2.2. ユーザーのITリテラシーが「バラバラ」であること
    3. 1.3.3. 利用が「強制的」であり、不満が溜まりやすいこと
  2. 2.複雑さを乗り越えるための「UXデザイン5つの基本原則」
    1. 2.1.原則1:戦略(strategy)
    2. 2.2.原則2:要件(scope)
    3. 2.3.原則3:構造(structure)
    4. 2.4.原則4:骨格(skeleton)
    5. 2.5.原則5:表層(surface)
  3. 3.自社システムを今すぐ診断する「使いやすさ」チェックポイント
  4. 4.良い業務システムは、従業員の「最高の相棒」になる

BtoBシステムが抱える「3つの特有の難しさ」

BtoC(消費者向け)アプリとは異なり、BtoBシステムには、UXデザインを難しくする独自の課題があります。

1. 機能が「多い・複雑」であること

金融機関の勘定系システムや企業の基幹システムを例に挙げると、日々多様な業務を遂行するために、膨大な機能が詰め込まれています。顧客管理、請求処理、在庫管理、経費精算、売上分析など、業務のあらゆる側面をサポートしようとするあまり、一つの画面に多くの情報や操作ボタンが詰め込まれがちです。

結果として、初めてシステムを利用するユーザーは、その複雑なUIを前に、どこから手をつけて良いか分からず戸惑ってしまいます。必要な機能を探し出すのに時間がかかったり、誤った操作をしてしまったりするケースも少なくないでしょう。

2. ユーザーのITリテラシーが「バラバラ」であること

システムを導入する企業の規模や業種、部署によって、利用者のITリテラシーは大きく異なります。テクノロジーに慣れ親しんだ若手社員から、デジタルに苦手意識を持つベテラン社員まで、多様なユーザーが同じシステムを利用するからです。

このように、利用者のスキルレベルに大きなばらつきがあるにもかかわらず、多くのBtoBシステムは「すべてのユーザーは一定のスキルを持っている」という前提で設計されてしまうことがあります。

結果として、ITリテラシーの高いユーザーは物足りなさを感じ、低いユーザーはシステムの利用にストレスを感じてしまい、不満の温床となってしまうのです。

3. 利用が「強制的」であり、不満が溜まりやすいこと

BtoBシステムは、業務を遂行する上で必須のツールであることがほとんどです。ユーザーにとって、システムが「使いにくいから」といって利用を辞めたり、別のツールに乗り換えたりする選択肢はないのです。

この「強制的な利用」という特性は、UXデザインの観点から見ると、ユーザーの不満が溜まりやすく大きな問題を引き起こすと言えるでしょう。

もしシステムにわずかでも不便な点があれば、ユーザーはそのストレスを毎日、何度も感じることになります。その不満は次第に蓄積され、「使いにくい」という否定的な声や、レビューの低評価、あるいは社内での利用率の低下に繋がってしまうのです。

複雑さを乗り越えるための「UXデザイン5つの基本原則」

多くのBtoBシステムが抱える「使いにくい」という課題を乗り越え、真にユーザーに寄り添ったシステムを実現するためには、UXデザインの5つの基本原則を理解し、体系的に取り組むことがポイント💡

これらの原則は、Webサイトやアプリを構成する「5つの階層」としても知られており、下から順に積み上げていくことで、論理的で質の高いユーザー体験を設計することができます。

原則1:戦略(strategy)

すべての始まりは「なぜ、このシステムを作るのか?」という根本的な問いから始まります。ビジネスの目標を明確にし、「誰に向けて」のサービスなのか方向性を決定します。ビジネス目標とユーザーのニーズを深く理解し、それらを一致させることを目指しています。

例えば、ビジネス目標が「顧客満足度を向上させること」であれば、ユーザーのニーズは「必要な情報に素早くアクセスしたい」かもしれません。この両者を明確にすることで、システム開発の方向性が定まり、後の工程で迷いが生じにくくなります。

原則2:要件(scope)

戦略が定まったら、次にシステムの具体的な要件を定義します。この階層では、「どんな機能が必要か」「どんなコンテンツを掲載するか」といった具体的な範囲を決定します。

たとえば、「顧客情報管理機能」や「契約書ダウンロード機能」といった、ユーザーのニーズを満たすための機能要件や、表示すべきデータなどのコンテンツ要件を洗い出します。

また、このプロセスではユーザー調査をおこないます。ユーザーのニーズを詳しく知るために、具体的にはアンケート調査やユーザーインタビューなどを実施します。

住信SBIネット銀行アプリUX向上プロジェクトを例に考えてみましょう。

このプロジェクトでは、単に表面的な問題を解決するのではなく、「ユーザーが日常的に行っているお金の管理や支払いの行動」に焦点を当て、ユーザーインタビューで深い部分にある不満や手間を徹底的に探り出しました。

その結果、ユーザーが本当に求めている本質的な価値を特定し、それを満たすための具体的な機能要件として「今後のシステムで優先的に提供すべき体験・価値」が言語化されました。このように、開発の初期段階でユーザーの潜在的なニーズを深く掘り下げ、システムに含めるべき要件を明確にすることが、成功するUXデザインの鍵となります。

(参照:https://www.netbk.co.jp/contents/lineup/sp-app/netbk/

原則3:構造(structure)

要件が固まったら、次に情報の構造を設計します。これは、システム内の情報や機能がどのように整理され、関連付けられているかを定める重要なプロセスです。

ユーザーが迷子にならないよう、情報アーキテクチャと呼ばれる「情報の地図」を作成し、ナビゲーションの階層や分類方法を論理的に整理します。例えば、「顧客情報」の中に「契約履歴」があり、その中に「請求情報」がある、といった情報の流れを明確にすることで、ユーザーは直感的に目的の情報にたどり着くことができます。

(参照:https://blog.nijibox.jp/article/what_ia/

原則4:骨格(skeleton)

次に構造に基づいて、システムの「骨格」を形作ります。この階層では、具体的なワイヤーフレームの設計やユーザビリティテストをおこないます。

ワイヤーフレームやプロトタイプを作成し、ボタン、フォーム、画像といったUI要素をどこに配置するか、コンテンツの配置やレイアウトを決定します。例えば、ユーザーが最も頻繁に使う検索窓を画面の目立つ場所に置いたり、重要なアクションボタンをどこに配置したら一番ユーザーの目に留まるかを徹底的に考えます。

WebデザイナーやUIデザイナーはこのワイヤーフレームを元にデザインするため、詳細に作り込むと後がスムーズに進むでしょう。

auじぶん銀行アプリを例に見てみましょう。

このアプリは、度重なる機能追加によって複雑化し、「どこに何があるか分からない」という課題を抱えていました。多くのユーザーは一部の機能しか使わないにもかかわらず、その機能にたどり着くまでの導線が不明確だったのです。

そこで、ユーザーの行動データを分析し、よく使う機能を優先的に表示するよう情報の構造化を見直しました。この改善によって、ユーザーは迷うことなく目的の操作にたどり着けるようになり、アプリをよりストレスなく利用できるようになったのです。

(参考:https://www.jibunbank.co.jp/service/jibun_app/

原則5:表層(surface)

最後に、ユーザーが直接目にする「表層」をデザインします。このステップでは以下の作業をおこないます。

  • 色・フォントの選定:テキストや背景色の選定から、見出し、本文、ボタンに使用するフォントの選択
  • 画像とパーツの制作:サイトやアプリの雰囲気に合った画像を選定。見出し、ボタン、アイコンなどの制作。
  • レイアウトの調整:ヘッダー/フッター、要素の配置やサイズ、スペース、余白バランスを整える

この段階のデザインは、単に見た目を良くするためだけではありません。

例えば、コーポレートカラーを使うことでブランドの一貫性を保ち、コントラストの高い配色を使うことで視認性を高めます。

このUIデザインが、システムの印象を決定づけ、ユーザーに「使いやすい」「信頼できる」という感情的な体験をもたらすのです。

自社システムを今すぐ診断する「使いやすさ」チェックポイント

あなたのシステムがこれらの原則を満たしているか、以下の簡単なチェックリストで確認してみましょう。

✅チェック項目例:

  • 戦略:あなたのシステムは、ユーザーの「どんな課題」を解決するために存在していますか?その目的は明確ですか?

  • 要件:ユーザーの実際の業務フローに沿った機能が、無駄なく提供されていますか?

  • 構造:探している情報や機能に、迷うことなくスムーズにたどり着くことができますか?

  • 骨格:最も重要な操作ボタンは、直感的に分かりやすい場所に配置されていますか?

  • 表層:画面全体の配色やフォントは、見やすく、目に優しいですか?

もしこれらの質問のいずれかに「NO」と答えたなら、それは改善の余地があるサインです。

良い業務システムは、従業員の「最高の相棒」になる

使いにくいシステムは、ユーザーの生産性を低下させるだけでなく、利用者の不満や心理的ストレスの原因にもなります。

多くの機能を持つシステムが「使いにくい」と評価されがちな一方で、優れたUXデザインのシステムは、ユーザーを迷わせることなく、まるで優秀なアシスタントのように業務をサポートします。

たとえば、みずほ銀行のアプリは、ユーザーが目的の機能に素早くアクセスできるよう、シンプルなホーム画面と直感的なナビゲーションを特徴としています。複雑な金融取引の情報を整理し、ユーザーが「今、何をすべきか」を明確に示している点が、高い評価を得ている理由の一つです。

優れたUXデザインは、単に使いやすさを提供するだけでなく、ユーザーの満足度や企業全体の生産性を高めるための未来への投資と言えます。

貴社のシステムも、これらの原則を適用することで、ユーザーにとって「最高の相棒」のような存在へと進化させることができるはずです!

アジケは多数の実績をもとに、金融プロダクトのUI/UXデザインの改善を行なっております!

自社システムのUX改善について、さらに詳しい相談を希望される方は、ぜひ一度お問い合わせください。お客様のビジネスに最適なソリューションをご提案いたします☺️

ajike丨UX Design
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”仕組みのデザイン”をテーマにUXコンサルティング、事業デザイン、UI/UX改善などを手がけるデザイン会社 ▼仕組みのデザインとは? 課題解決や価値創造が、局所的ではなく持続的に循環していくサイクルそのものをつくることです。例えば「DX」も仕組みのデザインのひとつ。教育現場や製造現 場、店舗など多数の場所においてDXの推進等を支援しています。

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