
上流工程からのQAがもたらす新常識〜手戻りをなくし、開発とリリースを迅速化〜
「リリース直前に表示崩れが発覚…」なぜ開発の終盤はいつも慌ただしいのか?
企業のウェブサイトやアプリを改善する担当者、あるいはリニューアルを検討している事業責任者の方であれば、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
開発もいよいよ大詰め。完成を楽しみにしていた矢先、予期せぬ表示崩れやバグが次々と見つかり、リリースは延期。修正作業に追われる日々が続く……。
なぜ、開発の終盤はいつも慌ただしくなってしまうのでしょうか?
その根本原因は、多くの開発現場で品質保証(QA:Quality Assurance)が「最終工程」だと捉えられている点にあります。
しかし、この考え方こそが、多くの手戻りとコスト、そして最終的なユーザー体験の低下を引き起こす大きな要因となっているのです。
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従来のQAが抱える限界。それは「手遅れ」なバグチェック
従来の開発プロセスでは、QAは「バグチェック」の最終防衛ラインとして機能します。
しかし、この方法には根本的な課題があります。それは、「手遅れなバグチェック」になってしまうということ。
テストがリリース直前になると、見つけられるのは表面的なバグや表示の崩れが中心になります。
もし、要件定義やデザインの段階で、ユーザー体験を損なうような設計上の致命的な問題が見つかった場合、どうなるでしょうか?
すでに完成したデザインや機能を大きく修正する必要が出てくるでしょう。その結果、膨大な手戻りコストが発生し、プロジェクト全体に大きな遅れが生じてしまうのです⚡️
さらに言えば、「品質」を「バグがないこと」と限定的に捉えること自体にも問題があります。
本当にユーザーに喜ばれる「質の高いプロダクト」とは、バグがないだけでなく、使いやすく、目的を達成しやすい優れたUX(ユーザー体験)を備えているべきなのです。
開発プロセスを革新する「品質パートナー」という考え方
これからのQAは、単なる「最終工程のバグチェック」ではありません。
プロダクト開発を成功に導くための「品質のパートナー」として、開発プロセスの初期段階から積極的に関わっていくことが求められます。
特徴1:上流工程からの参画(シフトレフト)
従来の開発プロセスでは、QAは実装が完了した後にテストを行うのが一般的でした。
しかし、この手法では、もし要件定義やデザインの段階に致命的な問題があった場合、修正には膨大な手戻りとコストが発生してしまいます。
そこで提唱されるのが、品質保証を開発プロセスの終盤から「上流工程へシフト(シフトレフト)」させるという考え方です。
要件定義やデザインの初期段階からQAチームが関わることで、「この仕様は本当にユーザーにとって使いやすいか?」、「このデザインではユーザーが迷う可能性はないか?」といった、本質的な問いを早期に投げかけられます。
例えば、新しいオンラインストアの決済プロセスを設計する際に、QAが事前にその導線をチェックすることで、「住所入力フォームが長すぎる」「クレジットカード情報の入力項目が多すぎる」といったユーザーの離脱につながりかねない問題を、開発が始まる前に発見し、改善することができます。
これにより、実装後にUI/UXを根本から見直すといった手戻りリスクを大幅に減らし、開発のスピードと効率を飛躍的に高めることが可能になります。
特徴2:デザインと開発、両面からの品質検証
QAの役割は、「仕様書通りに機能が動くか(開発品質)」を確認するだけではありません。
デザイナーが意図した「ユーザー体験(UX)」が、実際にプロダクトとして再現されているか(デザイン品質)を検証することも、非常に重要なポイントとなります。
例えば、三菱UFJ銀行が提供する家計簿アプリ「Mable(メイブル)」の開発では、ユーザーの複雑な取引や日々の家計管理を迷わず行えるように、UIや画面遷移に徹底的にこだわって設計されています。
この取り組みの裏側では、開発の初期段階から外部のテストベンダー(QA専門会社)が参画し、ユーザー視点でのテストが徹底的におこなわれていたのです。

このような高いUXデザインは、ただ仕様書通りにコードを書くだけでは実現できません。
QAは、デザインの意図を深く理解した上で、ボタンの押したときの反応速度、画面遷移時の滑らかな動き、エラーメッセージの分かりやすさなど、ユーザーの感情に影響を与える細部まで検証します。
これにより、プロダクトの機能的価値だけでなく、ユーザーが「使って心地よい」と感じる体験的価値を高めることができるのです。
(参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000030691.html)
※現在、Mableサービスは終了し、Money Canvasに移動しています。
特徴3:プロジェクトの目的に合わせた品質基準の設定
すべてのプロダクトに同じ品質基準を適用することは、効率的ではありません。プロジェクトの目的やフェーズによって、「どこまでの品質を担保すべきか」という最適な基準は異なります。
例えば、新しいサービスを市場にいち早く投入してユーザーの反応を確かめたい場合は、MVP(Minimum Viable Product:必要最低限の機能を持ったプロダクト)として、コア機能に絞った品質保証を優先します。
一方で、企業の信頼性を象徴するような大規模なリニューアルの場合は、セキュリティやアクセシビリティなど、より厳格で包括的な品質基準を設定する必要があります。
QAは、こうしたプロジェクトの目的を深く理解し、関係者と対話しながら、最適な品質基準を定義する役割を担います。
これにより、不必要なテストにリソースを割くことなく、プロジェクトのゴールに沿った最も効率的な開発を実現することができるのです。
「上流からのQA」がもたらす具体的なメリット
この「上流からのQA」という考え方を実践することで、チームやプロダクトに、以下のようなメリットがあると考えられます。

1.リリース前の手戻りがなくなる
従来の開発プロセスでは、テストが最終工程で行われるため、表示崩れや致命的なバグがリリース直前に発覚し、プロジェクト全体が停止する事態が起こりがちでした。
しかし、上流からQAが関わることで、設計段階での見落としや、ユーザー体験を損なう問題点が開発の初期段階で発見されます。
これにより、実装後の大規模な手直しや、リリース直前の慌ただしい修正作業が劇的に減少します。
まるで、建築の基礎工事の段階で欠陥を見つけるように、プロジェクトをスムーズかつ計画通りに進めることができるのです。
結果として、プロジェクトのスケジュール遵守率が高まり、無駄な残業や追加コストの発生を防ぎます。
2.開発チームが本来の業務に集中できる
開発チームが最も力を発揮するのは、新しい機能を作り、プロダクトをより良くするための創造的な作業に没頭しているときです。
しかし、予期せぬバグや手戻りが発生すると、彼らの時間は修正作業に奪われ、本来の価値を生み出す業務に集中できなくなってしまいます。
そこでQAが上流工程から関わることで、開発チームは高品質なコードを書くことに集中できます。
QAチームが「品質のパートナー」として、デザインや要件の検証を早期に担うことで、開発者は修正に追われることなく、新しい技術の導入やユーザーの期待を超える機能開発といった、より本質的な業務に専念できるのです。
3.顧客満足度の向上とブランド価値の向上
プロダクトの品質は、ユーザーからの信頼に直結します。バグが多く、使いにくいアプリは、ユーザーの離脱を招き、レビュー評価の低下やブランドイメージの悪化につながりかねません。
上流からのQAは、開発者やデザイナーだけでは気づきにくい、客観的な第三者の視点をプロダクトに注入します。これにより、プロダクトの使いやすさや安定性が向上し、「快適で信頼できるアプリ」というポジティブな評価につながります。
結果として、アプリストアのレビュー評価が改善し、口コミで新規ユーザーが増加するなど、アクティブユーザーの増加とブランド価値の向上という大きなメリットがもたらされます。高品質なプロダクトは、企業の信頼性を高める最も強力な資産となるのです。
これからのQAは「品質のパートナー」へ
品質保証(QA)とは、もはや開発の最終段階で「バグを見つける」だけの守りの役割ではありません。
これからのQAは、プロダクトの使いやすさと体験価値を最上流から高め、プロジェクト全体を成功に導くための戦略的なパートナーシップへと進化しています。
品質を最終工程でチェックするのではなく、開発プロセス全体を通じて作り込んでいくという考え方は、無駄な手戻りをなくし、チームの生産性を向上させることができます。
そして何より、ユーザーが本当に満足する高品質なプロダクトを世に送り出すことができるようになります。
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