
アクセシビリティをデザインする。誰もが使いやすいUIの実現方法
アクセシビリティは“義務”ではなく“UXの延長線”
「アクセシビリティ対応」と聞くと、法律で定められた義務や特別な取り組みのように感じるかもしれません。
しかし本来、アクセシビリティはUX(ユーザー体験)をより良くするための延長線上にある考え方です。
近年、企業がデジタルサービスを提供する上でアクセシビリティを重視する動きが広がっています。背景には、
- デジタル社会における企業の“社会的責任”
- 高齢化社会によるユーザー層の多様化
- デバイス利用環境の多様化(スマホ・音声操作・スクリーンリーダーなど)
といった変化があります。
つまり、アクセシビリティは「一部の人のため」ではなく、誰もが快適に利用できる体験を設計するための考え方なのです。
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目次[非表示]
アクセシビリティとは?WCAGや法制度の基本を理解する
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)とは
アクセシビリティの国際的な基準となるのが、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines) です。W3C(World Wide Web Consortium)が策定したこのガイドラインでは、ウェブコンテンツを以下の4原則で評価します。
- 知覚可能(Perceivable):情報やUI要素がユーザーに認識可能であること
- 操作可能(Operable):キーボード操作など、さまざまな方法で操作できること
- 理解可能(Understandable):情報や操作が理解しやすいこと
- 堅牢(Robust):支援技術(例:スクリーンリーダー)でも正しく動作すること
これらを満たすことで、誰にとってもアクセスしやすいサービス体験を実現できます。
(参考:https://waic.jp/translations/WCAG22/)
日本での法制度と対応の動き
日本では2024年4月から「障害者差別解消法」が改正され、民間企業にも“合理的配慮”が義務化されました。

(参考:内閣府 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html )
これにより、公共機関だけでなく、一般企業のWebサイトやアプリにもアクセシビリティ対応が求められています。
ただし、これは「法律だからやる」ものではなく、多様なユーザーに誠実な体験を提供することが企業の信頼を高める流れでもあります。
アクセシビリティは“バリアフリー”だけではない
アクセシビリティというと「障がい者向け」と思われがちですが、実際はもっと広い概念です。
たとえば、
- 視力が落ちてきた高齢者
- 騒がしい場所で音声を聞き取りにくい人
- 手がふさがっていて操作しづらい状況の人
こうした一時的・環境的な制約を持つ人も含め、すべてのユーザーに配慮するのがアクセシビリティです。
つまり、アクセシビリティとは「誰もが同じように情報へアクセスできる状態」を目指すことなのです。
UXデザインとアクセシビリティの関係性
アクセシビリティを考慮したUI設計は、まさにUXデザインの核心です。
“誰もが使いやすい”体験を提供することが、UXの目的そのものだからです。
UIデザインで考慮すべき主なポイント
- 文字サイズ:
小さすぎる文字は読みづらく、離脱の原因に。ユーザーが自由に拡大できる設計が理想です。 - 色コントラスト:
背景とテキストのコントラスト比は**4.5:1以上(WCAG推奨)**を意識。可読性が大幅に向上します。 - 操作性:
マウスやタップ操作だけでなく、キーボード操作や音声入力でも操作できるUIを設計すること。
こうした要素をデザイン段階で取り入れることで、結果的にすべてのユーザーにとって快適な体験を提供できます。
実践!デザイナーが今日からできるアクセシビリティ改善
アクセシビリティ対応は「専門的な知識が必要」と思われがちですが、今日から始められる改善ポイントも多くあります。
すぐに取り入れられる改善策
- コントラストチェックFigmaやAdobe XDには「Contrast Checker」などのプラグインがあります。WCAGの基準値を自動で確認可能。
- フォーカスインジケータボタンやリンクを選択したときに、どこにフォーカスがあるか分かるように枠線(アウトライン)を表示。
- 代替テキスト(alt属性)
画像に適切な説明文を設定することで、スクリーンリーダーでも内容を理解できるように。
ツール・プラグインを活用
- Stark(Figma/Sketch用プラグイン。コントラスト・色覚シミュレーションが可能)
- axe DevTools(ブラウザ検証ツール。自動アクセシビリティ診断)
- Wave(Webページ全体の構造を解析し、問題点を可視化)
これらを活用すれば、日々のデザイン業務の中で自然とアクセシビリティ意識を高められます。
品質保証(QA)の観点から見るアクセシビリティチェック
アクセシビリティは、デザインで終わりではありません。
実装・テスト段階でも、品質保証(QA)の観点で検証することが重要です。
チェックすべきポイント例
- 自動テストツールでの検証(例:Lighthouse、axe-core)
- スクリーンリーダー(NVDAやVoiceOver)を使った手動テスト
- タブ操作・キーボードのみでの操作確認
チェック体制を社内に組み込む
- デザイン段階でのチェックリスト化(WCAG項目を基準に)
- 開発時にlintや自動検証ツールを導入
- QA段階での再チェック+改善フィードバック
この流れを社内フローとして定着させることで、属人的な対応ではなく組織としての品質保証体制を作れます。
まとめ:アクセシビリティを“特別なこと”にしない文化をつくる
アクセシビリティ対応は、“特別なタスク”ではなく、良いUXを実現するための基本的なプロセスです。
デザイナー・エンジニア・QA・PMなど、すべての職種が「誰もが使いやすいデザイン」を共通認識として持つことが大切です。
ひとつひとつの改善は小さくても、積み重ねが大きな価値になります。
“全ての人にとって心地よい体験”を届けることこそが、これからのUI/UXデザインの使命です。
アクセシビリティに関してお困りのことがありましたらアジケにお気軽にご相談ください!









