北海道に本拠地を構える、會澤高圧コンクリート株式会社。高いコンクリート技術を軸にさまざまな事業を展開している同社では、数年前から業務のDXに挑戦されています。アジケは、基礎地盤事業内の専門業務及び提供サービスの一部のシステム化を支援いたしました。システムのリリースを間近に控えた2022年4月、プロジェクトメンバーが集い、これまでの取り組みについて振り返りました。
坂東さん
私たちの部署が担当しているのは基礎地盤事業といい、設計事務所さんやハウスメーカーさんと協業して住宅を安全に建てられるよう、コンクリートの杭を打ち込んで地盤の補強・強化をする事業を行っています。
— 貴社は数年前から「豪雨/津波防災支援システム」などさまざまな領域のDXに全社で取り組まれていますが、どんな背景があったのでしょう?
坂東さん
当社代表の會澤(會澤祥弘さん)が、いつも世界中を飛び回って最先端の情報や技術に触れ、それを社内に持ち帰ってくるんです。私たち社員はいつも社長から学ぶことが多く、DXもその一つでした。
浜野(アジケ)
會澤社長は社会を捉えている視座がとても高く、考えていらっしゃることのスケールも大きいですよね。ご一緒させてもらった私たちもそうですが、アジケ代表の梅本もすごく感銘を受けています。
坂東さん
土木やコンクリート関連の業界は、先進的な領域と比べるとまだまだ取り組みが追いついていないことが多いんです。私たちも数年前までは、昔ながらの手法で人の手によるサービスを提供していました。でも当社代表の會澤は、それに甘んじているとこの先の社会で孤立してしまう、と危惧していたようです。
当社が掲げている「コンクリートで社会基盤を守る」というミッションと、デジタル領域のテクノロジーを掛け合わせることができれば、新しいサービスを生み出すことができ、さらに社会貢献ができる。「じゃあ実際にどんなことができるだろう?」と模索しはじめたのが、ちょうど3年ほど前のことでした。
社内でさまざま検討した結果、まずは今まで属人的に提供していた一部業務のシステム化を目指すことにしたんです。
坂東さん
基礎地盤に関する業務はそもそも、地中のことなので目視ができないんですよね。そのため地盤を調査・測定する技術が必要となります。ただその計算は非常に複雑で、あらゆる条件を踏まえて行わなければなりません。
例えば、似たような土壌でも地域によって違う特質を持っていたり、もともと山だったところを切り崩したのか、それとも田畑を埋め立てたのかなど、その土地の成り立ちによっても性質が変わったりするんです。
坂東さん
提供者の私たちだけではなく、サービスを受ける側の設計事務所さんやハウスメーカーさんにとっても、非常に複雑でわかりにくい領域だったと思います。そのため迅速かつわかりやすく、最適解を導き出せるようなシステムがあればよいのではないかと考えました。
属人化している技術やノウハウを汎用化することによって、業務効率化を図り社内の生産性を高めるねらいもありましたし、お客さまに対するサービスの改善を図り、相談や問い合わせの敷居を下げたいという思いもありました。
坂東さん
たしかに、はじめは戸惑いもあったと思います。ただ私自身もそうですが、みんな今まで苦労してそのノウハウを身に付けてきた経験があるんですよね。それを今度は、自分たちが後輩へと受け継がなければならない。これから入ってくる後輩も、教える側の私たちも、その苦労をしなくてすむならそれに越したことはない、という感覚の方が強かったと思います。
坂東さん
私が担当になる前からパートナー探しがはじまっていて、実は1年ほどの時間をかけて、10社以上の企業とお会いしているんです。どんなことができる会社を選んで、どんな風に依頼をすればいいのかまったくわからないところからのスタートだったので。
その中で、いちばんフィーリングが合ったのがアジケさんでした。サイトを拝見したとき、デザインや開発をする前に「人の本質的な課題や欲求を見極める」というコンセプトを掲げられていたのが印象に強く残ったんです。
実際にご相談する中でも、私たちが実現したいことの本質をいち早く捉えてもらえた感覚がありました。受注サイドから発注者への提案というよりも、私たちの隣にきて一緒に同じ方向を見てくれたというか。当社側の目線に立ち、必要なプロセスや向かうべき先を一つひとつ明確にしていただきましたね。それでプロジェクトを進める具体的なイメージがわき、安心してお願いすることができました。
— 今回のプロジェクトでは、最終的に「kiCot(キコット)」という基礎地盤の販売支援システムを構築しましたが、当初のコンセプトからずいぶん変わりましたよね。
坂東さん
メンバーはみんな「絶対に使いやすいから、早く使いたい」と言ってくれています。ログイン画面のデザインを見てみんなのテンションが上がっているのを見て、私は個人的にこのプロジェクトの成功を確信しました。
もちろん、これまでの業務から移行して慣れるまでにはそれなりに時間がかかると思いますが、使う当事者から「使ってみたい」と言ってもらえるシステムができて、本当に良かったです。開発にあたっていろいろとご意見をいただいたお客さまからも、「実際に使うのが楽しみです」という声をいただきました。
齋藤(アジケ)
デザイナーとして、それはすごくうれしいことですね。
坂東さん
今回、アジケさんにプロジェクトを支援いただいたことで、人が本当に欲しい価値を提供するためにはデザインの力が必要であることを痛感しました。
例え最先端の技術を搭載していても、どんなに機能が優れていても、結局は人が使うものなので、体感として「使いやすい」「使いたい」と感じてもらうことができなければ、システム本来の価値を発揮することができないんだな、と。