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UXライティングとは?ユーザーに伝わる言葉のデザイン術を解説

なぜ今、UXライティングが注目されているのか

「うちのアプリ、UIは綺麗なのに、なぜかユーザーの離脱が多いな…」 「他社の人気アプリは、どんなところが評価されているんだろう?」

デザインが美しく、機能も充実しているはずなのに、なぜかユーザーが離れていってしまう。その原因は、もしかしたら「言葉の差」にあるのかもしれません。

現代のデジタルサービスは、機能面では似通っているものが少なくありません。そんな中で、ユーザー体験に決定的な差を生み出す鍵となるのが、実は「言葉の体験」です。つまり、アプリやウェブサイト上のひとつひとつの言葉が、ユーザーの行動や感情に深く影響を与え、離脱率やコンバージョン率(CVR)の改善に直結することが、近年強く認識されています。

 


UXライティングとは?

UXライティングとは、「ユーザーが迷わず目的を達成できるように導くための言葉の設計」のことです。単に情報を伝えるだけでなく、ユーザーの行動を促し、安心感を与え、心地よい体験を提供するための「言葉のデザイン」と言えるでしょう。

アプリのボタンの文言、エラーメッセージ、入力フォームのガイド、通知文など、デジタルプロダクトに存在するあらゆる言葉がUXライティングの対象となります。

コピーライティング・テクニカルライティングとの違い

UXライティングと混同されがちな「コピーライティング」「テクニカルライティング」との違いを明確にしておきましょう。

比較項目

具体例

目的

コピーライティング

広告・宣伝文

購買意欲を刺激し、ブランドイメージを構築すること

テクニカルライティング

製品マニュアル、取扱説明書

正確な情報や手順をわかりやすく伝えること

UXライティング

アプリ内のボタン、エラーメッセージ

ユーザーがプロダクト内でスムーズに目的を達成できるよう、行動を促し、不安を取り除く

つまり、コピーライティングが「買ってもらうため」、テクニカルライティングが「理解してもらうため」に言葉を使うのに対し、UXライティングは「気持ちよく使ってもらうため」に言葉をデザインすると言えます。

UXライターの役割とは?

UXライターは、単に文章を書く人ではありません。ユーザーの行動や思考を深く理解し、プロダクトの目的とユーザーのニーズを結びつける「言葉のスペシャリスト」です。デザイナーや開発者、プロダクトマネージャーと連携し、ユーザーテストの結果なども踏まえながら、最適な言葉を導き出す役割を担います。


UXライティングが重要な理由

UIだけでは伝えきれない「意図」や「安心感」を補う

どんなに優れたUIでも、言葉がなければユーザーは不安を感じます。特に金融アプリでは、丁寧な言葉でガイドすることで、ユーザーは安心して手続きを進められます。

マイクロコピー1つで離脱率・CVRに差が出る

ボタンの文言やエラーメッセージなど、UIの小さな言葉(マイクロコピー)は、ユーザーの行動に大きな影響を与えます。例えば、「送信」を「申し込みを完了する」に変えるだけで、ユーザーは迷わず行動でき、離脱率の低下やコンバージョン率の向上に直結します。

「理解できないUI」は「使えないUI」と同じ

どんなに革新的な機能を持っていたとしても、ユーザーがその使い方を「理解できない」なら、それは「使えない」のと同じです。言葉が不適切であれば、ユーザーは機能の存在すら認識できなかったり、使い方が分からず途中で諦めてしまったりします。


良いUXライティングの特徴

シンプルで分かりやすい

専門用語を避け、誰にでも伝わる平易な言葉で表現します。特に金融用語には簡単な説明を添えるなど、ユーザーに寄り添った配慮が重要です。

行動を促す(アクションを明確にする)

ユーザーが次に何をすべきか、その結果どうなるかを具体的に示します。抽象的な表現ではなく、明確な動詞を使って次の行動を促しましょう。

ユーザーの感情に寄り添う

ユーザーの状況や気持ちを想像し、共感的な言葉を選ぶことで、信頼感や安心感を高めます。例えば、エラー発生時にただ「エラー」と表示するだけでなく、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」といった一言を添えるだけで、ユーザーの不満を和らげ、安心感を与えられます。

一貫性がある(トーン&マナー)

アプリ全体で言葉のトーン(口調、雰囲気)とマナー(用語の統一)を保ちます。これにより、ブランドイメージが確立され、ユーザーは迷うことなくサービスを利用できます。


UXライティングの改善例

UXライティングは、言葉を少し変えるだけでユーザー体験を大きく向上させます。ここでは、具体的な改善例をいくつかご紹介します。

ボタン文言の改善

金融アプリにおけるボタンの文言は、ユーザーの行動を促し、安心感を与える上で非常に重要です。

Before

After

「送信」

「申し込みを完了する」

「なにを送信するの?」「本当にこれで完了?」など疑問や不安が残る

「申し込み」といった行動と「完了」という結果が明確に伝わり、安心してボタンを押すことができる

エラーメッセージの改善

エラーメッセージは、ユーザーが最もストレスを感じやすい部分です。単にエラーを伝えるだけでなく、その原因と解決策を示すことが重要です。

Before

After

「エラーが発生しました」

「通信が切れました。

もう一度お試しください。」

情報が少ないので、ユーザーが何をしていいかわからない。不安を感じて離脱につながる可能性が高い。

エラーの原因と解決策が明確に伝わり、ユーザーは安心して次の行動に移れる

フォーム入力時のガイド文の工夫

入力フォームは、ユーザーが手間を感じやすい部分です。適切なガイド文は、入力ミスを防ぎ、完了まで導きます。

Before

After

入力欄のみ

「お名前(例:山田太郎)」など、

具体的な指示や入力例を表示

なにを入力すべきか、フォーマットはどうかなどわかりにくい

迷わず正確に入力できる

ユーザーの迷い・不安を防ぐ文言

ユーザーが「これで合っているかな?」「大丈夫かな?」と不安に感じるポイントに先回りして言葉を添えることも有効です。

例:パスワード再設定時

Before

After

「古いパスワードはご利用いただけません」

「セキュリティのため、以前使用したパスワードは設定できません。」

「なぜ使えないの?」「なにか間違えたかな?」など疑問や不満が残る

理由が明確に伝わり、納得感を持って次の行動へ移れる


UXライティングの事例

Slackのログイン画面

「サインインするにはメールアドレスを入力してください」という明確な目的提示と、人が話しているかのような親しみやすい言葉遣いが特徴です。これにより、ユーザーは迷うことなく次の行動に移れるため、ストレスなくスムーズなログインが可能です。

Paidyの本人確認

Paidyは、より高度な機能へのアクセスに本人確認を推奨しています。その際、単に「本人確認してください」と求めるのではなく、「便利な機能が利用可能に」といったポジティブな表現や、「3・6・12回あと払いが分割手数料無料」といった具体的な経済的メリットを提示。これにより、ユーザーは本人確認の価値を理解し、納得して次のステップへ進めます。


UXライティングを実務で取り入れるには?

UIデザインと並行してライティングを設計する: 

デザインが完成してから言葉を考えるのではなく、企画段階からUIデザイナーとUXライターが協力し、言葉とデザインを同時に検討することが理想です。これにより、一貫性のあるユーザー体験を生み出せます。

ライティングガイドライン(Tone & Manner)の重要性: 

アプリ全体で言葉のトーン(口調)やマナー(用語の統一)に一貫性を持たせるため、ガイドラインの策定をおすすめします。これにより、誰が書いても高品質なUXライティングが実現できます。

書く→ユーザーテスト→改善のサイクルを回す: 

UXライティングは一度で完成しません。実際にユーザーに使ってもらい、その反応を基に言葉を改善していく継続的なサイクルが、大きな成果につながります。


まとめ:UXデザイナー・ライターに求められる“言葉の力”

UI/UXデザインでは「伝える」から「体験させる」ことへのシフトが加速し、「言葉の力」の重要性が増しています。

AIが文章を生成する時代でも、ユーザーの感情に寄り添い、「使いやすい」と感じさせる言葉を紡ぎ出す能力は、人間のUI/UXデザイナーやライターにしかできない唯一無二の価値です。

貴社のアプリやウェブサイトのユーザー体験改善と顧客満足度向上のため、ぜひUXライティングの視点を取り入れてみてください。

アジケは、多数の実績をもとに金融プロダクトのUI/UXデザイン改善を支援しています。「自社アプリの言葉を見直したい」「離脱率改善のために何から始めればいいか分からない」といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

ajike丨UX Design
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”仕組みのデザイン”をテーマにUXコンサルティング、事業デザイン、UI/UX改善などを手がけるデザイン会社 ▼仕組みのデザインとは? 課題解決や価値創造が、局所的ではなく持続的に循環していくサイクルそのものをつくることです。例えば「DX」も仕組みのデザインのひとつ。教育現場や製造現 場、店舗など多数の場所においてDXの推進等を支援しています。

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