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目指すは銀行サービス全体の一貫した体験創出。各サービスを網羅した体験設計で、デザインチームの挑戦を支援いただいてます。

株式会社三井住友銀行

リテールIT戦略部長 江藤 敏宏様
リテールIT戦略部 デザイナー 堀 祐子様

株式会社三井住友銀行は、デザインプロフェッショナル職の発足をはじめデザインを強化しています。ajikeは同社のサービス・プロダクトのUI/UXデザインや、組織のデザイン力強化を支援しています。
最近は、銀行の支店に関わる銀行員・お客さまの体験の設計、デジタルコンテンツ全般のデザインシステムの策定も同社のデザイナーの方々と一緒に推進しています。

 

本インタビューでは、デザインへの投資強化を牽引しているリテールIT戦略部長の江藤さま、デザインプロフェッショナル職の堀さまに、デザイン組織の変遷や、現在進めているプロジェクトについて伺いました。

 

インタビュイー

株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部長 江藤 敏宏様(写真左から2人目)

株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部 デザイナー 堀 祐子様(写真左から3人目)

インタビュアー

株式会社アジケ UXデザイン事業部 プロジェクトマネージャー/COO 神田 淳生(写真右)

株式会社アジケ UXデザイン事業部 リードデザイナー 藤戸 日果里(写真左)

銀行にもユーザー目線で発想するプロセスが必要だと感じた

ー まず、デザインへの投資を強化された背景を教えてください。

 

江藤さん

5年ほど前にスマートフォンのアプリを見直すことになり、外部からデザイナーの方が入ることになったんです。その時がUXデザインとの出会いで。ペルソナやジャーニーマップをパパーっと作る姿を見て、結構衝撃を受けました。こういうユーザー目線で発想するプロセスが銀行にも必要だとすごく思ったんです。

 

 

ー これまでUXデザインのプロセスを取り入れることはなかったのでしょうか?

 

江藤さん
なかったですね。外部の方は契約期間が限られているのですが、そうじゃなくて一緒に仕事をして、ある程度僕らのビジネスを理解しているからこそできることがあると思って。それなら「銀行でデザイナーを採用しよう」という発想に行き着いて、2016年12月にデザインプロフェッショナル職1人目が入行しました。

 

ー 今までデザイナーのような職種はないですし、承認をとるのに苦労されたんじゃないかなと思います。

 

江藤さん

大変でしたよ。幸い、上層部に僕らの考えに賛同してくれる方がいました。
2019年から本部全体がドレスコードフリーになりましたが、リテールIT戦略部は3年前からやっています。実は室内のレイアウトも他部署とは違っているんです。こういう「銀行らしくないこと」を僕らの部署は推進してきました。
初めは、僕らだけが私服だったりすると、行内の人として認識されなかったりしました。しかし、徐々に他の部署が同じようなことを始めて、全体に浸透していったんです。

 

 

「三井住友銀行アプリ」のグッドデザイン賞受賞が転機に

 

ー リテールIT戦略部から始まった取り組みだったんですね。御行内で、デザインへの認識が変わるきっかけは何かありましたか?

 

江藤さん

「三井住友銀行アプリ」のグッドデザイン賞の受賞が大きかったですね。やっぱり知っている人が多くて、社内外から非常に反響が大きかったですね。

 

 

堀さん

形にして世の中に出して、結果評価されるという積み重ねはすごく大事だと思いますね。

 

江藤さん

それ以前は僕らの部署だけでデザインに力を入れていましたけど、それ以降は色々な部署から何かあれば「リテールIT戦略部に聞きに行こう、学びに行こう」という雰囲気に変わってきました。

 

ー 最近は、リテールIT戦略部以外でも御行内の資料や会話の中でも「デザイン」や「UX」といったキーワードを見聞きします。

 

江藤さん

そういった言葉が出てくる文化が醸成されたのは本当に良いことだと思います。元々当行は「お客さま本位」を非常に大切にしていて。昔の銀行だとお客さまとの関係はface to faceだったんですけど、それはデジタルも一緒。今では、そういうことを考えて、企画から形にするところまでを担うデザイナーの価値をすごく理解してくれています。「デザイナーをもっと増やせないのか」と言われるほどです(笑)。

 

 

ajikeさんは上流から一緒に考えてくれる。だから確信を持って進められる。

 

ー 今では、6名のUXデザイナーの体制にまで拡大したんですよね。
現在、弊社は複数プロジェクトに参画させていただいています。御行と弊社では、デザインの進め方も異なると思いますが、何か変化や気付きはありましたか?

 

堀さん

ajikeさんにはサービスの上流、中核のところから一緒に考えてもらっていますよね。社内だけでは細い線だったと思うんですけど、それが太い線になって確信を持ちながら進められるというのがあります。

 

今、支店で使う業務支援ツールの設計を一緒に進めていますが、体験設計のロジックをしっかり持たれていて、私も学ばせてもらっているところです。
行員にはやることが膨大にあって、優先度が全部高いんですよ。金融商品を扱うものですし、信頼を積み上げていかないといけないので、ミスは絶対に避けたい。しかし、そこばかりを重要視してしまうと、お客さまのことが後回しになってしまう。
ajikeさんはジャーニーマップ上で、きちんとお客さまと行員それぞれにとって重要なことを、優先順位を立てて可視化してくれているんです。行員も一緒に納得して進められるようになりました。

 

 

ー 嬉しいです。

 

堀さん

銀行にいるとどうしても銀行側の目線になってしまうんですけど、一緒に進めることによって全体を俯瞰でき、ユーザー目線で今の課題を出せるようになりました。ちょうどいいバランスで色々と考えられていいですね。

 

銀行に関わるお客さま・行員の行動の可視化で、今後の銀行のあり方を検討

 

ー 続いて一緒に進めているプロジェクトについて伺います。御行では、サービスや各支店などお客さまとの各接点において一貫したユーザー体験を届けるという大きな構想をお持ちです。
その施策の1つとして、銀行の支店に関わる行員とお客さまの2軸で、体験の整理を行っています。今後のサービス設計に対してどのような効果があると考えていますか?

 

堀さん

「行員やお客さまはこんなことをする」などヒアリングし体験設計をつくっていく中で、やりたいことのニュアンスはわかるけど、現場のイメージがなかなかできないところがありました。
それをサービスブループリントなどで細かく言語化したり、イラストで表現することによって支店での行員さんの動きやお客さまのやりとりのイメージがつきやすくなりましたね。そこで新たに見落としていた課題やアイデアの発想につなげられたりして、できることの幅が広がってよかったなと思っています。
また、似ているサービスを持つ部署もあるので、今後銀行全体のサービスを考えたときに、もっとよりよい形にできるのではないか?といった発見がありますね。

 

行員の行動を可視化したサービスブループリント

 

ー 今まさに設計している段階ですが、今後取り組みたいことはありますか?

 

堀さん

組織が大きいのでどうしても縦割りでプロジェクトが進んでしまうところもあり、部署間で商品の情報共有がなかなか進まないこともあります。このサービスブループリントを使って、関係部署間で、俯瞰したユーザー体験を意識づけできるようにしたいですね。

 

 

ー デザインチーム内だけではなく、行内の様々な部署の方を巻き込んで作っていくことが必要だと思うのですが、活用していけそうですか?

堀さん

そうですね。今作っているサービスブループリントが1つのチャレンジになると思っています。関係部署を巻き込むことで、お互いのプロジェクトが他の部署とどう関係していくのかを認識することができます。現実目線に落としたときに、どのようにプロジェクト同士を連携させていくかを考える必要がありますね。

 

ー ブループリントやジャーニーマップは、一度作っても有効活用できないまま終わってしまうことがありますよね。

 

堀さん

それは避けたいですね。今、ストーリーボードをリテールIT戦略部の部屋だけに貼っていますが、他部署にも共有してお客さまの業務全体に関わってくるものとしてきちんと認知させていきたいです。

 

行内に掲示しているストーリーボード

(ストーリーボードは解像度とスピードのトレードオフだ。より転載)

 

デザインシステムの設計をリードしてくれた

 

ー現在デザインシステムの設計も一緒に進めています。御行には数多くのサービスやプロダクトがありますし、UI/UXデザインを標準化し品質を担保する意味でデザインシステムの設計が必要でした。
影響力の大きいプロジェクトなので、進行していて難しさを感じているのですが、堀さんご自身も何か難しいと感じられていますか?

 

堀さん

銀行のプロダクトは、デバイスがPCやスマホ、タブレットさらに媒体がWebブラウザやアプリもあり、1つのパーツ、例えばボタンやアイコンなどに対していくつかパターンを考えないといけなくて。とはいえ、自由度をもたせすぎると、ガイドラインではなくなってしまうので、そのバランスを取るのが非常に難しいなと思います。

 

ー プロジェクトが無数にあるので、統一していくのが難しいですよね。
そろそろα版のデザインシステムが完成しそうですが、ここまで一緒に進めてみていかがでしたか?

 

堀さん

最初は、インハウスデザイナーでプロジェクトを進めていく予定だったのですが、他案件でリソースが取られプロジェクト進行が難しくなる局面がありました。ajikeさんに相談してプロジェクトマネジメントを担ってもらい、インハウスはデザインの方針、判断、ディティールに対しての品質に集中することで、スピード感が格段に上がったなと思っています。柔軟に対応していただけたことに感謝していますし、プロジェクトの進行の部分についても学ばせてもらっています。

 

 

ー デザインシステムの中身についてはいかがですか?

 

堀さん

決める範囲はインハウスデザイナーで確定しているのですが、その中でajikeさんは私たちが気づかないところを先回りして考えてくれて助かっています。
ajikeさんはデザインシステムの使い手の目線で詰めて考えてくてれているのでしっかりしたものを作れています。

 

ー デザインシステムは作って終わりではなく継続的に運用していかないといけないものだと思いますが、どのように浸透させていきますか?

 

堀さん

使い勝手が悪いと浸透していかないと思うので、HTML化してどこからでもアクセスできるようにしたいですね。PDFにまとめるだけだと、イントラネットにアクセスしてダウンロードしないといけないですし。
あとは、勉強会などを開いて周知したいです。初めてデザインに触れる人にもわかるようにレクチャーしていきたいですね。

 

チームの連携が強く、リモートでも安心して進められた

 

ー 続いて話題が少し変わるのですが、新型コロナウイルスの感染拡大下で各種プロジェクトをリモートで進行したことについて伺います。オンラインでのコミュニケーションに何か不安はありましたか?

 

堀さん

ajikeさんの場合は特に不安はありませんでした。むしろ遠隔で進めることで、ニュアンスで伝えられないことを、きちんとテキストにして伝えるようになってよかったなと思っています。

 

ー 私が感じたのは、リモートの場合メッセージで話しかけたらすぐに会話できるところが強みだなと。

 

堀さん

そうですね。ajikeさんは本当にアットホームでチームの連携もあり、団結力が強いですよね。気軽に相談できて、気軽に返していただけるというところで、非常に安心して進められています。

 

ー 嬉しいです。課題に感じられていることはありますか?

 

堀さん

もしわからないことがあれば、遠慮せずに聞いていただきたいというところですね。
あと、課題ではないのですが、デザインの面で行内に味方が増えた感じがして心強いです。例えば決裁をする中でもいかにデザインが大切なのかを伝えないといけないんですけど、私1人では心が折れそうなときもajikeさんがバックアップしてくれて心強いです。

 

ー ありがとうございます。今後、何か弊社に期待することなどあれば教えて下さい。

 

堀さん

どうしても外部のパートナーさんだと、どこかで線引きされてしまうのですが、デザイン組織をうまくプロジェクトの中で進めていく方法など提案をしていただいて、とても有難いなと思っています。
銀行のプロジェクトは本当にたくさんあるので、もっともっと幅広く入っていただきたいですね。

 

 

ー 最後に、今後の展望を教えてください。

 

江藤さん

個人のお客さまと銀行の距離を縮めるものを、オンラインでつくっていきたいですね。銀行の窓口が開いている時間、僕たちのような世代は働いているんです。だから、銀行に行くこともなかなかない。そうするとお客さまにとって銀行って一体何なのだろうかと。
だったら、スマホが窓口になればいい。支店がなくなるということではなくて、対面がよければ銀行の支店の窓口まで来ていただき、支店まで行けない方にはスマホで解決できるようにしたいですね。

 

 

堀さん

金融のデジタル化により、お客さまとの接点が多くなりますよね。そういうところにはUXやデザインの力が大事だなと思います。

 

江藤さん

銀行で扱っている商品は銀行によってそれほど変わらないんですよ。違いを作る要素は、使い勝手やデザインになっていくはずです。
そのためにも、インハウスデザイナーをもっと増やしていきたいですね。リテールIT戦略部だけにデザイナーがいるのではなく、プロダクトを持つ部署にはUXやデザインを見る人が必要だと思っています。
そして、この文化をグループ全体に定着させたいですね。人が代わったら終わってしまうような流れには絶対にしてはいけないと思っています。

 

 

撮影: 坂田貴広さん