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Webサービスの進化で、人類の出会い方はどう変わる?「KitchHike」CTO藤崎祥見氏インタビュー


3月18日、地域コミュニティでなんでも募集できるCtoCアプリ「メルカリアッテ」がメルカリの子会社であるソウゾウ社によってリリースされた。実際に会ってモノを売買したり、イベントを開催したりできるCtoCプラットフォームとして、またスマホEC市場で圧倒的な地位を築いたメルカリの次の一手として注目されている。

地域コミュニティにおけるクラシファイド広告には米国でcraigslistが代表的で、日本ではジモティーがその地位を築いている。彼らはいずれもモノやスキルを売ったり、仲間を募集したり、オールジャンルに渡って展開されているサービスだ。

これらと似た仕組みながら、「料理」をフィールドにしているのが2016年5月でローンチ3周年を迎える「KitchHike(キッチハイク)」だ。COOKと呼ばれるユーザーが料理を提供し、HIKERと呼ばれるユーザーが料理を食べに訪れる仕組みの同サービス。共同創業者でCTOの藤崎祥見氏は「一緒にご飯を食べると楽しいよ、ということを体験してもらいたい」と語る。

彼らがユーザーに与えている価値は「食べること」という“物質としてのシェア”ではなく、「一緒に食べて楽しい」という“体験の発生”であり、AirbnbやUberなどの台頭で注目されている「シェアリングエコノミー」とは性質が異なる。ストレートな言葉で表現すると、それは「出会い」のサービスだ。

そんな「料理」をツールとする出会いを価値とした同サービスの創業時を、藤崎氏は以下のように振り返る。

共同創業者の3人がみんな海外が好きで、海外旅行をよくしていたんですよ。その中でさらに共通していたのが「現地の人たちと仲良くなりたい」「現地の人の暮らしを体験したい」という思いでした。その中で一番何が思い出に残ったかというと、現地の人とご飯を食べて仲良くなったことが思い出として強かったんです。

マイナスをゼロにする課題解決型のビジネスではなかなか見られない、プラスアルファとしての「幸せの実現」を目指す同サービス。今回は藤崎氏に、ローンチ4年目の現在地や、注力しているコミュニティデザインの話、そして「出会い」をもたらすサービスとしての今後の展望を聞いた。(太字は筆者)

ハックや最適化の限界からの、カウンターカルチャーを目指すKitchHike

−−ローンチしてから、これまでの道のりはどのように振り返っていますか?

5月で丸3年ですが、低空飛行でしたね(笑)僕たちは新しい領域で、新しいサービスにチャレンジをしていると思っていて、「何かのリプレイス」ではないんですよね。最初サービスを始めたころも、今もそう思っています。なので市場も「食」の分野ではないですし、単純にみんなでご飯を食べたらおいしいし仲良くなれるっていうビジョンで進めていったので、それが広まるといいますか、浸透するまでに時間はかかったと思いましたね。

−−実現したい文化の浸透具合に関しては、どのような感触ですか?

3年でかなり変わりましたね。どんどんインターネット上で空間やモノを共有、提供したりすることが増えました。例えば、最近メルカリさんが出した「atte」みたいな文化が好きなんですよね。

実際に物を「会って」売買するという文化です。実際に僕たちはインターネットの文化の中で勝負はしていますけれど、ハックや最適化には限界があるんじゃないかと感じていて。そこのアンチテーゼとして、カウンターカルチャーとして、実際に人と会ってご飯を食べるという、より物理的なサービスを運営しています。人と人とが交流する現場を大事にしています。

「食」はツール。「一緒にご飯を食べると楽しい」という体験を与えたい。

−−一番ユーザーに与えたい体験はどういったものなのでしょうか。

KitchHikeそのものなのですが、「一緒にご飯を食べると楽しいよ」ということですね。その一緒にご飯を食べる過程で、様々なよいことがありますよ、というのは体験しなければわからないと思うので、実際に体験するという行為を大事にしています。その行為を促すこと自体が我々の意義のひとつですね。今はなんとなくwikipediaを見ればなんでも載っていますし、世界の観光地の写真もネットで調べればすぐに出てくる時代じゃないですか。

そこでKitchHikeというサービスはわざわざ「ご飯を食べに行かなければいけないという」ハードルを上げるサービスなんですけれども、本当に人と話して、舌で味わってみるとよいことがあるよと。「ボタンを押して届いてくるご飯」よりも、もっとよいことがあるよということに気づいてほしい、というのがありますね。

−−こうした体験を与えられている実感はありますか?

最近KitchHikeで「世界が変わってきたな」という出来事がありました。今年の1月1日にKitchHikeがあったんですよ。1月1日の日本の家庭に、アメリカの若いカップルの方が食事しに行かれたんです。こんなのないじゃないですか、2~3年前までは。僕にとってはすごく印象的な出来事でした。

他にもレビュー率が高いのが印象的で、ほとんどの人がレビューを書いてくれます。また、KitchHikeのイベント後にHIKERとCOOKが入れ替わってイベントを行うことがありました。料理を食べた人が、「次は私が作るから食べにきてね」という風に。それも日本人と日本人のお友達ではなくて、日本人と台湾人だったり。そこがすごく面白いですね。

−−一度体験するとその楽しさがわかり、リピーターになっているんですね。

そうですね。想定よりも「体験」の部分で単価が上がっています。最低10ドルに設定していた時期は、ワンコインランチなどもどうだろうとか言っていたんです。でも今の単価は3000円前後にまで上がってきています。ご飯ではなく、体験全部の付加価値だったんだなと思っています。あのとき下げなくて、変な施策しなくてよかったなと(笑)

−−体験価値がユーザーによって証明されている形になっているんですね。

「料理」ではなく「人」にフォーカス。KitchHikeのコミュニティデザイン

−−「ご飯を一緒に食べる幸せ」を形成していく上で、工夫をしているところはありますか?

僕らはコミュニティデザインに注力をしていますね。いかにユーザーさんに使ってもらって満足度を高めるかが勝負だと思っています。僕らの付加価値って「満足度」だと思うんですよ。特にそんなに安いわけでもないですし、「ご飯を食べて仲良くなって楽しかった」というのが一番の付加価値なのでそこがマックスになるようにコミュニティを考えていますね。

具体的にはベタにコンテンツです。ユーザーさんは価値が確定していないものにお金を払うのが苦手なところがあるので、それをわかりやすく「KitchHike」にお金を出したらこういう楽しい体験ができるんだよ」というサービスの価値をいかに伝えるかというところ。コンテンツとデザイン、クリエイティブにはすごくこだわっています。

誰が作ったかわからない料理はわざわざ食べたくないし、行こうと思わないですけど、共通点がある人や共感できる人には会いに行きたい。僕はエンジニアなんですが、例えば、恵比寿に住んでいるイタリア人で、オープンソースにコミットしているエンジニアで、しかもイタリア料理のエピソードがずらっと並んでいたら「なんだかこの人に会いに行きたい」となると思うんですよね。僕はイタリアに行ったことがあるので、イタリアの話もしたいです。なので料理を作っている人にフォーカスしてそこを説明してコンテンツをすごく増やしています。

−−デザインの定義もこうした空気感の形成も含めた、広い意味に変わってきていますよね。

ビジュアルデザインが日本ではよく言われがちですけど、広義のデザインという点でコミュニティデザインをすごく大事にしています。ビジュアルデザイン、UI/UXっていうのはすごくコミュニティの濃度を上げてくれる「共感点」だと思っています。

現在もKitchHikeのデザインやらコンセプト、広い意味でのデザインに共感してくれている人がサービスを使ってくれているんです。だからユーザー同士の満足度も高いしトラブルもゼロなのだと思います。そういう意味でのデザインは重要だと思います。サイトのビジュアルデザインや写真の選び方もすごく気をつけています。

KitchHikeというサービスが交流体験におけるひとつのインターフェイスになってほしい

−−今後の展開プランや目標はどういったところになるのでしょうか。

今後はポップアップイベントをどんどん進化させていく方向で進んでいますが、ビジョン的なところでいうと、 僕はKitchHikeが「交流体験におけるひとつのインターフェイス」になるといいなと思っています。

−−インターネット上でのスタンダードということでしょうか。

いえ、KitchHikeがスタンダードというよりも、インターネットの可能性を最大限に活かしたくて。人はもっと上手くインターネットを使えるようになると思ってます。「KitchHikeを使って、初めてインターネット上の人と出会ったけどよかったな」にしたいんです。

(従来の「危険」とされている)「出会い系」っていうのは大切なものをすっ飛ばしてあっているから事故っていると思うんです。

人柄や経歴、見かけや写真、友達など、オープンにしても良いその人の構成のひとつひとつを、KitchHikeや他のサービスでクリアにしていくことで、インターネット上での信頼関係が可視化されると思うんです。そのオープンにする行為がスタンダードになっていくことで、インターネットのサービスを使って人と会うのは「安全だし、普通ですよ」と言える一役を買えればなと思っています。

−−「ネット上で出会った後の体験が良いものだ」とわかるようになったり、出会うことのリスクを減らすことができれば、もっと出会いの幅が広がりますよね。

そうですそうです。インターネットってもっと可能性があると思うんです。それがもったいないんです。今は結局僕たち自身がインターネットを使えていないだけで、いろんなものをすっ飛ばしているから事故っているだけなんです。

もっと実際に仲良くなるのっていろんなことが必要じゃないですか。インターネットってその過程をすっ飛ばせるわけではなくて、インターネットですっ飛ばせるのは「距離」が中心なんです。(コミュニケーションの部分で)「実はここは飛ばせなかったよね」という点は実際に出会うことで出てくると思うので、実際に出会ってみないと何も始まらないし、交流の仕方は進化しない。KitchHikeや他のサービスで課題やベストプラクティスがわかってきて、人類みんながインターネットをさらに活用できるようになったらいいなと思っています。

KitchHikeを使ってもらうことが最終目的ではなく、KitchHikeを通して人との交流の仕方がより良い方向に変わればいいなと思っています。

−−それが「交流体験におけるひとつのインターフェイス」ということですね。本日はありがとうございました!

Webサービスの進化で人類の「出会い方」はどう変わる?(編集後記)

「ボタンひとつでなんでも届く世の中」で、KitchHikeというサービスはわざわざ「ご飯を食べに行かなければいけないという」ハードルを上げるサービスなんです。

藤崎氏自身も以上のように話していたが、切実な課題意識や欲求がなく、プラスアルファを生活にもたらすフィールドでの事業は確実に潰すべき課題があるサービスと比べると、難しいもののように感じられる。

ただ、今からわずか10年前。人々は忘れているかもしれないが、日本ではまだインターネット上では2ちゃんねるやmixiを中心としたハンドルネーム文化が色濃く残り、Facebookの進出にも「日本で実名の交流サービスは広まらない」といった声も多く聞かれた。

しかし、今では言うまでもなく、同サービスがなくてはならないインターネット上での交流ツールになっている。別にネット上で、それも実名で人と交流できないなんていうところで、誰も困ってなんかいなかったにも関わらずだ。

出会いをもたらすWebサービスやアプリは、人間のネットリテラシーと共に時代によって進化を遂げてきた。あまりにも当たり前になっているため、意識することは少ないけれど、藤崎氏がいう「人はもっと上手くインターネットを使えるようになる」という言葉は数々の先人たちによって実現されて、私たちの生活に馴染んでいる。

tinderで恋人が出来たり、yentaで出会った仲間と事業を始めたり、ここ1~2年でもテクノロジーの進化でどれだけ新たな人生を変えるような出会いが生まれてきただろうか。人と人との最適な出会い方は私たちが想像するよりまだまだ多く眠っている可能性が高い。

出会い方を変える主役はKitchHikeを含め、今回の記事であげられたような一つひとつのサービスに限らない。確実に変わっていくWebサービスの進化と人と人との出会い方にこれからも注目したい。

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