UXデザイナーの富樫です。今更ですが、今やUXデザインどころか、Webサービス/アプリ制作において必須という存在になっている「ペルソナ」の作り方について紹介します。
ペルソナとは?
サービス開発時、あるいは運用時でそのサービスが最も価値を提供したいユーザー像です。
通常、性別や年代、年収などの基本情報に加えて、性格やライフスタイルなどの項目を埋め、届けたいユーザー像をプロジェクトメンバーで共有します。
サービスデザインや情報設計やUIデザインはこのペルソナにどんな価値や体験を提供できるか?と考えて進められることが多いです。
ペルソナを作るメリット
ペルソナを設定するということは「プロダクトを通して幸せにする相手が明確になる」ということです。
この作業を行うメリットは大きく分けて以下のものがあると思います。
1.効率化 制作における「ブレ」の減少
・プロジェクトメンバーで共通のユーザー像を持つことで、議論の終着点が「この人にとって価値があるか」という点でまとまる
通常、ペルソナを定義しない段階で議論をするとあれもこれもいいものは取り入れたい!という思考になってしまいがちですが、全員のゴールが共通化されているため、最終的には「◯◯さん(ペルソナ)がどう感じるか」という点で収束可能になります。これはディスカッションをする上でも大きなメリットになります。
・UXデザイン、情報設計、UIデザインの作業で「優先すべきこと」と「そうでないこと」が明確になる
ターゲットが明確になっているため、サービスデザインを進めていく中でユーザーにとってコアとなる要素も自然と絞られ、設計を進めていく中でも自然に「「◯◯さん(ペルソナ)が喜ぶのはこれだな」という思考でデザインが可能になります。
プレゼントを渡す相手が明確になっていなければ、どんなに品揃えがいい百貨店にいっても選びようがありません。画面の向こうの「その人」のことを考えて最適な設計をするという点でペルソナは重要な役割を果たします。
2.質の向上 制作における「質の高いアウトプット」への貢献
1.の段階でも質の高いアウトプットには貢献していますが、より深いインサイトを掘り出すという点でもペルソナ設定は不可欠です。
ユーザーの事を深く知るという手法には「ユーザーインタビュー」などがありますが、この手法に入る前にその「ユーザー」がどんな人物であるか定義することが重要です。
他にも普段から私たちは生活や街で「それらしきユーザー」に会っているはずです。ペルソナを定義していないことで制作に活きるインサイトをみすみすスルーしてしまっているかもしれません。
ペルソナシートを作ってみよう!
では実際にペルソナシートを作ってみましょう。
以下はajikeが実際に使用している一例です。
もちろんプロジェクトやチームによって最適な形があると思います。ここではほぼ全てに共通する要素だけをまとめました。
ペルソナ開発では本来インタビューや調査を重ねて人物像を設定する材料を集める段階が含まれます。今回は「ペルソナシート」にフォーカスしますので、主に調査すべき項目だけを挙げてみます。
社会的属性を調査してみよう
まずここの基本情報が最初に記入すべき項目かもしれません。
よくあるサービス制作のフローは「事業戦略」→「プロダクト制作」という流れです。
事業戦略の部分でビジネスモデルを精査する際に、お金の動く規模、流れがある程度想定されているはずです。
社会的属性は職業、年収など消費に密接に絡んでくる部分ですので、むしろビジネスモデルの段階でも埋められる項目といっていいかもしれません。
心理的特性を調査してみよう
このユーザーがどんな趣向、ライフスタイルなのか?を定義することはサービスデザイン、UIデザイン、ビジュアルデザインに絡んでくる部分です。
ここを定義することでユーザーとのコミュニケーションデザインが円滑に進みます。
どんなにおもてなしの達人でも、性格を知らない人にプレゼントを選ぶことは難しいですよね。
しかし、こうした趣向がわかってくると与えるべき体験が明確になり、施策に活かすことが可能になります。
ITリテラシーを調査してみよう
UIやデザイントレンド、機能は日々アップデートされており、ユーザーが適応できるものを適切に配置する必要があります。
スマホに慣れ親しみ様々なアプリを使いこなす10代女性と、娘に勧められてスマホを購入したものの電話とメールしか使っていない50代男性では当然与えるべきサービスは変わってくることでしょう。
ペルソナの段階でこうしたリテラシーのレベルを定義しておくことはプロジェクトを進めていく上で有効です。
イメージ画像を選んでみよう
ペルソナ設計で意外に重要なのが「プロジェクトメンバー全員が、あーいるよねこういう人」と思えるかどうかです。
デザインを進めていく上で共通認識を強く持たせるために、メンバーに実際の人物として印象付けることが必要です。
このサービスをプレゼントしてあげたい人物像を思い描き、ひたすら人物写真を探してみましょう。
この写真がハマれば他の項目もイメージがつきやすくなるため、ペルソナ設計の最初の方で写真を決めてしまうことも多いです。
ペルソナを活かして制作に進んでみよう!
ペルソナシートを埋めた後は、しっかりと制作に生かしていきましょう。
事業者として
ペルソナシートを作ってみて、自分のサービスのアイディアをもう一度見直してみましょう。自分視点のアイディアが先行しており、ユーザーが求めている価値とずれがあるかもしれません。ニーズに合わせて調整する必要性も出てくるかもしれません。
UXデザイナー、IAとして
サービスデザインや情報設計をする際に、ペルソナシートで定義したユーザーに刺さるような内容になっているか、意識しながら設計を進めていきましょう。
そして、必要な段階ではペルソナシートを持って街へ出てみましょう。価値を届けるべき人を定義して設計しているので、テストをするべき顧客が明確になっているはずです。
UIデザイナーとして
ペルソナ像が無理なく継続して使ってもらえるようなインターフェイス作りを意識して行いましょう。漠然としたターゲット像よりも根拠に基づいたデザインが制作できるはずです。
ペルソナシートづくりは制作者サイドの想像するユーザー像で記載してしまいがちですが、正確に優れたプロダクトを生むためにはペルソナ像をつくるための調査も不可欠になってきます。その調査方法についてはまた追って記事にしたいと思います。