
海外と日本のWebサイトアクセシビリティ状況を比較してみた
Webアクセシビリティは、すべての人がインターネットの恩恵を受けられるための重要な要素です。高齢者や障害者を含む多様なユーザーに配慮したWebサイト設計は、企業の社会的責任(CSR)だけでなく、事業拡大の新たなチャンスともなります。
本記事では、海外と日本のWebアクセシビリティの現状を比較し、実際の改善事例やツールを紹介しながら、効果的な改善策を考えてみたいと思います📝
目次[非表示]
- 1.海外におけるWebアクセシビリティの現状
- 1.1.国際標準ガイドラインの適用
- 1.2.成功事例
- 2.日本におけるWebアクセシビリティの現状
- 2.1.法規制と取り組み状況
- 3.海外と日本の比較
- 4.改善のヒントとアクションプラン
- 4.1.すぐに実行できる簡単な改善策
- 4.1.1.1. 代替テキスト(alt属性)の設定
- 4.1.2.2. キーボード操作の確認
- 4.1.3.3. コントラスト比の最適化
- 4.2.ユーザー中心のプロセスを導入する
- 4.2.1.1. 実際の障害を持つユーザーの参加
- 4.2.2.2. ペルソナとユーザージャーニーの作成
- 4.3.ツールを活用して効率化する
- 4.3.1.1. Wave(https://wave.webaim.org/)
- 4.3.2.2. Axe(https://www.deque.com/)
- 4.3.3.3. Color Contrast Analyzer(https://www.tpgi.com/color-contrast-checker/)
- 4.4.社内文化としてアクセシビリティを根付かせる
- 4.4.1.・定期的な社内トレーニング
- 4.4.2.・成功事例の共有
- 5.おわりに
海外におけるWebアクセシビリティの現状
国際標準ガイドラインの適用
海外では、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines) が広く採用されています。以下は代表的な事例です。
アメリカ
ドミノ・ピザのウェブサイトがアクセシビリティ基準を満たしていなかったため、2019年に訴訟を起こされたことをご存じでしょうか?このケースは、Webアクセシビリティ対応が法的義務であることを強調する事例として世界的にも注目されました。
▼参考
WebAIM Million Report 2023 によると、アメリカではアクセシビリティ基準を満たすサイトが全体のわずか3%とのこと。
EU
イギリスの公共交通機関「Transport for London(TfL)」は、アクセシビリティ対応を徹底した結果、視覚障害者や高齢者からの満足度が大幅に向上しましたと発表しています。
▼参考
EUのWebアクセシビリティについては:European Commissionの公式サイトをご参照ください。
成功事例
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Apple: 音声アシスタント「VoiceOver」を搭載した製品が代表例。Webサイトも含め、すべてのデジタルプロダクトがアクセシビリティ基準を満たすよう設計されています。
- 参考: Appleのアクセシビリティ取り組み(公式ページ)
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BBC: BBCのアクセシビリティガイドラインは、デザイナーにとってとても参考になります。具体的には、字幕機能や音声ガイドを積極的に採用したこと。すべてのユーザーが番組を楽しめるよう工夫されています。
- 参考: BBC Accessibility(公式ページ)
日本におけるWebアクセシビリティの現状
法規制と取り組み状況
日本では、JIS X 8341-3がアクセシビリティの国内基準として存在します。しかし、行政や一部の大企業を除き、多くの企業で対応が進んでいないのが現状です。
成功例
- NTTドコモ: NTTドコモの公式サイトでは、キーボード操作や音声読み上げが対応されています。そうすることで、高齢者や障害者からのアクセス数が増加しました。
課題事例
2022年、ある自治体のサイトで代替テキストが未設定のため、視覚障害者が重要な情報にアクセスできない問題が指摘されました。この問題は、アクセシビリティ対応の重要性を浮き彫りにしています🧐
海外と日本の比較
比較項目 |
海外 |
日本 |
基準の 浸透 |
WCAGが法的に義務化されている国が多い |
JIS X 8341-3はガイドラインとして推奨されるのみ |
企業文化 |
アクセシビリティ=企業の社会的責任と捉えられる |
コスト削減やリソース不足から優先順位が低い |
対応の 具体例 |
AppleやBBCのように全社的な対応が進む |
対応企業は大企業や行政が中心 |
改善のヒントとアクションプラン
すぐに実行できる簡単な改善策
アクセシビリティ対応は、実は特別なスキルや大きな予算を必要としない部分から始めることが可能です!以下にすぐに実施できる基本的な取り組みを紹介します。
1. 代替テキスト(alt属性)の設定
画像に代替テキストを設定することで、視覚障害を持つユーザーにも情報を伝えることができます。たとえば、eコマースサイトでは、商品画像に「青色の長袖シャツ」といった具体的な説明を加えることでユーザーの利便性を向上させることができます。
2. キーボード操作の確認
障害を持つユーザーや高齢者の中には、マウスを使用できない人もいます。そのため、タブキーだけでページのすべての要素(リンク、ボタンなど)にアクセスできることも重要なポイント。チェックポイントとして、ナビゲーションメニューやフォームの操作を試してください。
3. コントラスト比の最適化
テキストと背景色のコントラストを調整し、WCAG推奨基準である4.5:1以上を目指します。たとえば、薄いグレーの背景に淡い黄色の文字では視認性が低いので、色を変更してコントラストを上げて誰にとっても読みやすいデザインに改善させることができます。
ユーザー中心のプロセスを導入する
アクセシビリティを考慮したWebデザインでは、ユーザー視点でのプロセス設計が重要となっています。具体的なステップを紹介します。
1. 実際の障害を持つユーザーの参加
障害を持つユーザーを対象にしたテストを設計プロセスに組み込むことで、見落としがちな課題を発見することができます。
2. ペルソナとユーザージャーニーの作成
アクセシビリティ対応には、多様なユーザーのニーズを理解することが重要です。高齢者や聴覚障害者など、アクセシビリティを必要とする具体的なペルソナを設定することと、その人たちがどのようにサイトを利用するかを可視化することで、改善ポイントが明確になります。
ツールを活用して効率化する
アクセシビリティ対応を効果的に進めるためには、専用ツールを活用するのが便利です。以下はおすすめのツールとその活用方法です:
1. Wave(https://wave.webaim.org/)
無料のアクセシビリティ診断ツールで、サイト上の問題箇所を視覚的にハイライトします。初心者でも使いやすいインターフェースが特徴です。
2. Axe(https://www.deque.com/)
ChromeやFirefoxの拡張機能として利用できる強力なツールで、WCAG基準をもとにエラーを検出します。特にデベロッパー向けの詳細なレポートが得られるのが魅力です。
3. Color Contrast Analyzer(https://www.tpgi.com/color-contrast-checker/)
コントラスト比を簡単にチェックできるツールで、デザイナーやフロントエンドエンジニアにおすすめです。
社内文化としてアクセシビリティを根付かせる
アクセシビリティ対応は、一部の担当者だけではなく、組織全体で取り組む必要があります。
・定期的な社内トレーニング
アクセシビリティの基本や最新の基準について、全社員が学べる機会を設けましょう。トレーニングでは、ユーザー事例を共有すると効果的!
・成功事例の共有
他社の成功事例や自社での改善効果を共有することで、社員のモチベーションを高められます。たとえば、改善後のユーザー数増加やポジティブなフィードバックを報告することで、簡単に自分事化することができ、エンゲージメントを向上させることができます。
おわりに
Webアクセシビリティは、インクルーシブなデザインの重要な柱です。日本ではまだ改善の余地がありますが、少しずつ取り組みを進めることで、全てのユーザーが快適にWebを利用できる未来を実現できます。
アクセシビリティ対応は、小さな工夫から始められる大きな価値ある取り組みです。この機会にぜひ、あなたのWebサイトでもアクセシビリティ対応を進めてみてはいかがでしょうか?
アジケの考える「デザイン」は、アクセシビリティがより包括的で普遍的な方向へ進むべきだと考えています。
アクセシビリティに関してお困りのことがありましたらアジケにお気軽にご相談ください!